短編:クソみたいな話
ぼくはいま電車の座席に座っている。
目の前にはうんこみたいなモノがある。
しかし僕は驚かない、なぜならちゃんと確認してうんこみたいなチョコだと判断したからだ。
だが次々と乗ってくる人々驚き、時には悲鳴をあげて、ぼくのまわりから、いや、うんこみたいなチョコのまわりから離れていく。
ぼくの両隣は空いている、座るにはそのうんこみたいなチョコを経由しなければならないからだ。
ぼくはそもそも電車の座席に座るのが好きじゃない、なぜなら知らない人が近くにいるのがめっぽう嫌だからだ、隣で足を組まれたり、自分のサイズ感を理解できてない人や、シンプルにヤバいやつに座られたらひとたまりもない。
立っていても隣に人が来たら同じじゃないかと言われるが、全然同じじゃない、バカが。
でも今日は違った、うんこみたいなチョコを確認するために席に近づいた結果自然と座ってしまった。
ちゃんと確認してない人からしたら、それはうんこに見える、その時は気付かなかったがただうんこに近づいた人になりたくなかったのだろう。
次の駅、また次の駅へと電車は走っていく。
その度に人が乗ってきて、その度にうんこみたいなチョコに視線を向け、怪訝な表情を浮かべ離れていく。
ただのうんこみたいなチョコなのに滑稽である。
その刹那、僕は突然不安に襲われた。
もしかしたら"チョコみたいなうんこ"なのかもしれないと。
そう思った瞬間、なんか臭い気もしてきた。
いや、そんなはずはない、ちゃんと確認したはずだ。
必死に自分に言い聞かせるが、どんどん恐怖心がわいてくる、これがもしチョコみたいなうんこだったとしたら、その前に堂々と座っている僕はとてつもない変人にみえる。
なんなら僕がこのうんこをしたんじゃないかと疑われてしまうかもしれない。
それがもしうんこだとしたらいま僕が座っている座席にも付着している可能性すらある。
僕は知らぬ間にうんこと読んでいるではないか、何をしているんだ。
しかし今更席を立つ勇気もない。
マイノリティというものはこんなに怖いのか。
そんなことを考えていると降りる予定の駅に着いた、やっと席を立つ理由ができた。
安堵した僕とすれ違いで派手な服装のヘアピンまみれの珍しい老婆が電車に乗った、ドアが閉まる直前にその老婆が呟いた。
「なんだ、この糞は」
僕はクスリと笑い、その場を後にした。
